新時代の書店の形―教育・保育事業の取り組み―

地域の未来をはぐくむ

今井書店は、2019年に「今井書店子育て支援プロジェクト」を発足いたしました。
このプロジェクトには、今井書店が、地域の子どもたちが未来に大きく羽ばたくためのお手伝いと、
保護者の皆さまの子育てのお手伝いをしていきたいという思いを込めています。

元来当社では、書店店頭や小中高等学校、公立図書館など、地域の子どもたちと長年関わって参りました。
近年はその他に、絵本の定期便、学生服のリユースショップ、子どもたちの力を伸ばし興味を広げる学習塾や各種スクールの運営など、
子どもの成長を応援する多彩な事業を展開しています。
さらには、2020年には企業主導型保育所「本のほいくえん」を開所しました。
私たちは、主役である子どもたちに加えて、ご家族や地域の皆さま、書籍や玩具、教室やイベント、情報や体験を繋ぐ者として活動いたします。

新時代の書店の形 ―教育・保育事業の取り組み―

株式会社 今井書店グループ
代表取締役社長 島 秀佳

 

取り組みの経緯

今井書店は、まもなく創業150年を迎えます。
この150年の間に、社会環境や生活スタイルは人々の想像を超えるスピードで大きく変化してきました。
文明・文化の発達、いくつかの戦時下、高度経済成長、バブル崩壊などさまざまな出来事を経て、特にここ近年はインターネットの発達もあり、そのスピードも幅もめまぐるしいものがあります。
当然その影響は書店にも小さくなく、書店業界は1996年をピークに売上が下がり続けており、私たちも例外ではありません。

本離れ、ネット書店、電子書籍と要因は様々ありますが、他より大きな店を構えて、たくさんの在庫を用意して、どうぞお越しくださいというこれまでの書店の形が、今どきの生活スタイルでは支持されなくなっているということなのかもしれません。
従来の書店の地域での役割が変わり、存在価値が問われているのではないかと感じ、本当にこれまでどおり書店を続けてよいのかと思うことがあり、創業者は何を思い書店を始めたのか、それを考えるようになりました。

私たちの創業者である初代の今井兼文は岡山で生まれ、長崎の鳴滝塾等で学んだ蘭学医です。
ちょうどシーボルトが国外追放されていた時期で直接師事することはなかったものの、その後鳥取藩の儒医となり、明治5年に医業の傍ら今井郁文堂を創業しました。
当時は明治維新の、まさに国が変わろうとする激動の時代です。
そんな中、兼文は、地域が育ち、地域が豊かになるためには一人ひとりに知識が必要と考え、書店を創業しました。
それは、本を売ることが目的ではなく、「出版物が広まることで、これからの時代に必要な知識や文化が人々に普及する。一人ひとりがそれを享受すれば、地域が変わっていく」という思いからでした。
まさに私たちが目指すものはこの原点ではないかと思い至りました。

 

人を育て、地域を育てる

書店業を営む中で、私たちはとりわけ地域の子どもたちに長年深く関わってまいりました。
店頭では週末になると保護者の方と一緒に本を選ぶ子どもの姿があり、外商部が学校へ伺うと車を見て「今井書店だ」と言ってくれる児童や生徒のみなさんがいます。
さらには、「小さな頃から通っています」「親子3代、4代で利用しています」と言ってくださる方もいらっしゃいます。
そういったたくさんのこの地域の子どもたちに、知識や文化にふれる機会の創出、将来の夢のきっかけ作りを担っていく、それが創業の精神にそった私たちの役割だと考えます。
それは、今後の今井書店の事業の中心となっていくものでもあります。

人を育てる。地域を育てる。ーー
これからも地域の子どもたちの笑顔と明るい未来のために、今井書店は挑戦し、貢献してまいります。